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「応天の門」は絶対面白い

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菅原道真に萌えたことってある? 私はある。悶え苦しんでいる。

作者の灰原薬は、映像化されたドラマで印象の強い「SP(エスピー)」が一番有名っぽい。そちらはマンガも映像作品も触れた事がないのでここでも触れない。

応天の門」新刊が出ていたのを発見したので、喜びと共に紹介してみる。

 

応天の門」は平安クライムサスペンスと銘打って飛び出してきた、萌え萌え平安メンズバディ日常系マンガである。(語弊ありまくりです)

今日では「学問の神様」と言われる菅原道真ちはやふる(ちはやぶる)」の和歌でお馴染みの在原業平がタッグを組み、平安の世に渦巻く怪奇や陰謀(藤原家)と闘う物語。

キャラ設定が、読者の理性の絶対領域をちくちく突っつく。

超賢い菅原道真がクソ萌えジト目ツンデレ設定を与えられ、在原業平がえげつないほど女ったらしのフェロモンむんむんおじさまに仕上がっている。なんと卑怯な。

 

 

そんなお二人が、協力したりケンカしたり赤面したり仲直りしたり意地を張り合ったりこっそり気遣い合ったりしている。

……お前ら付き合ってんの?

私と妻は、菅原道真在原業平とケンカし、やがて素直に謝罪してきた在原業平の事を顔を真っ赤にしながらモジモジ許すシーンに悶え苦しんだ。

果てしなく賢いのに不器用で生き方が下手な道真と、世渡り上手で“大人”の生き方と汚さを知っている業平の、対照的な人格と長短が心地よいリズムでドラマを生む。

 

 

そして案外ユルめの空気の中に結構ハードな副題が見え隠れする。最新刊8巻でそれが顕著になった。作者が一番描きたかった内容(場所)に物語が追いついたんだろうな、と確信する。

 

天才的な「力(知力)」を持った道真に、努力してもダメだった凡才たちが人生をダメにした後に次々こう言う「あんたはいいよな、何にでもなれるんだろ?」と。「あなたが羨ましいです」と。

趣味で学んではいたが、努力をしなかった天才(道真)が、ついに初めて疑問にぶつかる。

「一体何のための学なのか?」と。「誰の為に振りかざす力、才能なのか?」と。

 

 

読者がすっかり好きになった主人公が、壁にぶつかるのは面白い。乗り越えた先にどういった答えを出してくれるのかワクワク妄想してしまうから。

家柄が全てを決めてしまう時代で、良家に生まれた道真は、自分がどれほど卑怯で畜生な「強くてニューゲーム」な人生を満喫していたのかに気付いてしまうわけだ。

 

 

想像を軽々と凌駕する深みを出し始めた物語は、ここから本番を迎えるのだろう。質の良い小説に匹敵する読書体験を叶えるマンガへと化けていきそうだ。

結末はまだどのようにも転がるが、キャラが立ちまくっている以上、どんな選択でも我々は受け入れてしまうのだろうと思う。

 

サラリーマン諸氏と同じで、私も移動中に最新刊を貪り読破。毎朝地下鉄で目にする私と同類のような「マンガ読んで、次の日にラノベを経由して、その次にまたいつも通りシェイクスピアに戻っているような、文学寄りの暴食タイプ」の読書家に強くおすすめ。読者の性別も年齢も選ばない無類の面白さを保証する

唯一注意を促したい点。新刊の出るペースが遅いタイプの作品なので、一気読み専門家の方はそこだけは注意されたし。