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「ゴーン・ガール」もう読んだ?

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妻が消える。5回目の結婚記念日であるその日に。

 

付随する情報: 微妙になってしまっていた夫婦仲、不自然な拉致現場(自宅)、そこに被害者(妻)の血液反応あり、妻の日記、オレ語りをする主人公(夫)の言葉の中にある嘘、夫婦間だけで通じる特殊メッセージ、秘密と欺瞞と嫉妬と虚栄心と罠と、あとは嘘、嘘、嘘、嘘、嘘。ぜんぶだ、ぜんぶ嘘。

 

ゴーン・ガール」は、妻がいきなり失踪した夫の目線から物語が開幕する。それと交互にいきなり挟まってくる「妻の日記」。まず浮かぶ最初の疑問があるのだ。コレどこから出てきて、いつ誰が読んだ日記なんだ? もちろん答えは示される。凄まじい悪夢の発現とともに。

 

この小説を読み始めて、読者はすぐに首を傾げるだろう。この夫は嘘をついている。しかもそれをはっきり認めて、警察の取調べに対して何回嘘をついたのかさえ読者に教えてくれる。どう見ても夫には何かやましいところがある。警察だってこの男に違和感を抱いている。でも彼は我々に言う。「自分は妻を殺していない」と。明らかな嘘をつくこの男は、必死に別の何かを隠している。それなのに妻との結婚記念日の恒例行事である『宝探し』に純粋にうちこむ。なんだこの男は。

この『宝探し』は妻からのヒントが書かれた紙をもとに、ふたりの思い出の場所を次々と訪れ、そこで新たに得たヒントからゴールである『結婚記念日のプレゼント』を夫が目指すというもの。

彼がヒントをたどって行く、消えた妻との思い出たちに満ちたいろんな場所で、妻が隠した次のヒントと、妻からのラブレターを手にする。そのラブレターには、冷えきってしまった夫婦の愛をもういちど輝かせようとする妻の愛と優しさが綴られていた。

自分がとっくに諦めてしまった愛を、妻はもういちど生き返らせようと、この結婚記念日を用意してくれていた。そして、何者かの手によってさらわれ、いま生きているのかさえ分からない。夫の心は震える。もういちど妻を取り戻して、なんとしても彼女との人生をやり直したい。ど ん な 手 を 使 っ て で も 。

 

警察の捜査があまりに進まないために、夫は周囲の同士を巻き込んで自力での調査も敢行する。やがて彼らは、妻が不法者たちから銃を手に入れようとしていた事を知る。そのタイミングで妻の日記のターンだ。妻の日記がこう語る。「夫に殺されるかもしれないから銃を手に入れなきゃ」。

 

 

……こりゃもう大変だね。どうなるでしょう? 事実はどうなっているのでしょう?

ここまでお付き合いいただいた読了済の方々は、私の書き方と小説の紹介のしかたが悪意に満ちていると思われるだろう。仕方あるまい? 悪意の塊が小説に化けたのがこの「ゴーン・ガール」なんだから。

『私も』嘘はついていない。いっぱい隠して(伏せて)いるけどね。ネタバレ予告もせずにこの続きを語ってしまうのは野暮かアホでしょう。お楽しみはこの後なんですよね。嘘で嘘を洗って、はったりと賭けで殴りあう「夫婦生活」というものは、文字通りの「死闘」だ。

 

私はいつになく小説の展開と仕掛けられた罠にすぐ気付いた。しかも結末までほとんどの予想が当たっていた。タイトルが露骨すぎて引っ掛かる。邦題の訳だけ変えるべきだったのでは? と思うが、予想が当たっても『その想像以上』の悪意をいっちゃうから、この小説に限ってはもうそんなのどうでもいい。

 

こんなに読みやすくて柔らかい文章で、ここまでドス黒い人間の汚さを見せられたのは初めてかもしれない。野暮だのアホだの言いながら、話題をかっさらったベストセラー小説を今さら薦める私がアホなんだ。

もしまだ読んでいない方がいれば、これは絶対手に取るべき小説だ、とだけお伝えする。ぜんぶあるから。愛も欲望も逆恨みも誤解も罠も犠牲も怖さも、そのすべてだ。誰かを好きになった事がいちどでもあるのなら、こいつは押さえておこう。

 

この筆量と軽さと内容の重さで中だるみ一切ナシ。こんなのファンにならずにいられないじゃないか。誰にでも薦められる化物小説だが、さらにダメ押ししようか。

コレ、映画化されている。しかもそっち(映画)の出来もけっこうな評判だ。遅ればせながら私も映画版見たさにブルーレイをポチった。私がポチったときはAmazonでもブルーレイで500円くらいの破格だった(まだ在庫あったよ)。ちなみにあの娘とのアレのシーンもばっちり映るらしいですぞッ!(蛇足)。

 

最後に大声で言おう。私がいちばん伝えたい事だ。あなたが触れる「ゴーン・ガール」が小説でも映画でも、絶対にネタバレを知らない状態である事を薦める。絶対に調べるな。バラされる前に読め(観ろ)。